劇団「ドラマシアターども」

5月26日 舞踏 オオタ コタロウ

『立冬のころ』に音楽を提供してくれた、オオタ コタロウ君の心が揺れる舞踏 お見逃しなく!

公演によせて-「雑踏で踊った記録・泣いた赤鬼」/オオタ コタロウ

 去っていった、たった一人の友達、青鬼。

彼は居なくなったけれど、青空の中に、吹きくる風の中に、赤鬼は青鬼の姿を見つけるのでした。だから、赤鬼は寂しくありませんでした。赤鬼は青鬼に会いたくて、いつも一人で山の中で遊んでいました。けれど、そうすればそうするほど、赤鬼は街の中に自分の居場所を見つけられなくなっていることに気づきました。赤鬼はその時、初めて寂しいと思いました。

 「オレ、人間と友達になりたい!」

そう言って、赤鬼は街へ降りていきました。

雑踏に立って、人の顔を眺めました。どんな人かわからないからわかろうと思いました。道端にゆっくり座ったり転がったりしました。その場所が自分にとって大切な場所になりうるかどうか知りたかったのです。

けれど、そんなことはどうだってよかったのです。上手くは言えないけど「あぁ、みんな生きているな。」と赤鬼は思いました。その時、赤鬼は人の中にも、街の中にも、去っていった青鬼の姿を見つけました。青鬼はやさしい風になってどこにでも吹いていたのです。

 

その時、赤鬼は人間の顔になって人間のように笑いました。赤鬼の心の中でいじけていた青鬼もにっこり笑って「生きていてね」と言い残し、赤鬼の血や肉の中を吹いていきました

 

そうして、互いの境い目がなくなった二人は、一つの身体になって、踊っていました。いつまでもいつまでも一緒でした。赤鬼はもうちっとも寂しくはないのでした。